人と人とのつながり
- 2006/3/3
- 日々の出来事
一昨日、オンライン(ネット社会)とオフライン(現実社会)の話を書いた。世の中には、ネット社会になると途端に信頼出来なくなる人がいる。しかし私は、くどいがオフラインの常識をオンラインに持ち込みたい。
7年ほど前、慰安旅行で訪れた仙台で、ぶらりと立ち寄った土産物屋で墨を買った。1本1000円。表面が凸凹の奇妙な形で、異様に軽い。手に持ってみると軽くてスッカラカン。でもこの形が・・・どうにも気になってしかたがない。
実用習字で使う小筆は筆先が傷みやすく、場合によっては、1回使ったらもう終わり・・・なんてこともある。だから1本250円くらいの小筆を大量に買って小まめに取り替える。そんな金銭感覚だから、1000円は高価で躊躇するも、訪れた土地で思い出の品を買うのも良いだろう・・と1本購入。
墨には、青みがかった黒、赤みがかった黒、茶色と色々あるがこの墨はとにかく黒い。その分、白い半紙とのコントラストが美しく、書いた文字がくっきり浮かび上がって見える(腕が無くても上手に見える)。この墨で書いた昇段級試験は全て合格し、あっという間に準師範に。
軽いということは密度も薄いのか、すぐ磨れる(減りも早い)。1分も磨れば、真っ黒でとろみのある墨汁の出来上がり。墨磨り時間大幅短縮。これはすごい♪
とろみのある墨汁・・・
知らない方のために説明すると、つまり滲まない墨ということ。
作品を書く場合、この滲み具合が絶妙な雰囲気を醸し出すが、実用習字には必要ない。
想像して頂きたい。祝儀袋の文字が滲んでいるところを・・・不要ですねw
このとろみは文字を書いたとき、紙に吸い込まれずに盛り上がり、立体的で迫力も出る。(その代わり、かすれないよう注意が必要)
話を戻して・・・
1本しか買わなかったことを後悔し、大切に使っていたが、師範試験を目前に、いよいよ磨り減って限界が近づいた。
買いに行くといっても仙台は遠い(ここは関西)。
店の名前も覚えてないし、レシートも捨てた。
ちょうどインターネットが会社に導入された頃で、
仙台の観光協会(商工会議所)にメールを送り、墨を扱う店を探して頂いた。
駅名と店の場所を伝えたが見つからず、さらに地域を広げて探して下さったそうだ。180軒にも上る土産物屋、思い当たる店を片っ端から電話して下さったが判明せず、ネットで「鈴鹿墨」を検索すると、何度調べても三重県鈴鹿市に辿りつく。仙台で買った墨のこと・・・仙台の「鈴鹿」だろうと思うが、そんな場所は存在しない。
止むを得ず、三重県に住むメル友を頼り、そのまた友人へ・・・待つこと数日。
- COCOりん、見つかったよ! -
会ったことも無い人たちが私のために動いて下さる。ネットの力はすごい。やはり三重県鈴鹿市の「鈴鹿墨」。製造工場も突き止め、電話でアポを取り伺った。
奥様が応対して下さり、この墨を買ってからここに辿りつくまでのいきさつ、この墨で書いた試験は全て合格して縁起が良いこと、師範試験を目前にして、再度この墨の力を借りたいことなど・・話した。仙台には出荷しておらず、なぜそんな場所で売られていたのか奥様もご存じなかったようで、大変驚かれていた。
今回は12本(直売ということで1本800円)、あるだけ買占め、COCOサンご満悦♪
せっかく来てくださったのだからと、珍しい形の墨をお土産に頂いた。写真左が購入した「糸瓜(へちま)」、右がお土産の「源頼朝」と桐箱入りの「鯛」。他に、墨絵用の墨も・・・
師範試験はさすがに難しく、私の入院も重なって、1度目は失敗。約2年間練習を重ね、再挑戦。合格。この墨を見るたび、人のつながりと、皆さんの思いやり・温かさを思い出す。頂いたお土産は、勿体なくて今も使えない。
類は友を呼ぶというが、自分がいい加減な気持ちでネットを利用すれば、そういう仲間が集うだろう。きちんとした付き合いをする意志があれば、そんな仲間が集うし、たとえ下心を持った人が現れても、居心地悪くて去っていく・・・
いくら顔が見えなくてもお世話になった方々には感謝しているし、自分も誰かの役に立てればと思う。たとえ恩返しする相手は違っても、世の中上手く受け継がれていくものだと思う。
墨が凸凹のイビツな形だった理由・・・
墨は通常、型に入れて固めるが、この墨は手でギュッと握り締めただけ。そのため握り具合によって形がみな微妙に異なるが、個性があって私は好きだ。
傷んだ筆・・・
すぐには捨てず残しておこう。筆先の傷みは、腕が上がれば技術でカバー出来る。余生は蘭の薬塗り。(捨てなくてよかった・・・涙)
仙台の商工会議所の皆さん・・・
探して頂いたお礼とお詫びに、墨が見つかった旨と経過説明のメールを送ったら、丁寧なお返事を頂き、ますます恐縮。
お世話になった皆さん、本当に本当にありがとうございました。